長野県品質工学研究会の活動報告(2023年4月&5月)
|
2023年5月25日 08時07分
|
長野県品質工学研究会
2023年4月14日(金)に2023年度の臨時の研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子・航空技術部門(長野県岡谷市)およびオンライン(Webex)にて同時開催した。(参加者:12名)
以下の4つの事例発表についてディスカッションした。
【事例発表】
1.「SN比が高くなると、ノイズ(誤差因子)に対してどうなる?」 ((有)増田技術事務所 増田雪也)
パラメータ設計をやる前と後で、ノイズに対してどうなるのかを紹介した。パラメータ設計後は、ノイズに対して強くなるので、ロバストな状態を実現できる。
2.「MT法 生産ライン適用への検討」(太陽工業(株) 葉玉知子)
センサーデータを監視し、金型破損や摩耗などの異常検知にMT法の適用を検討している。特徴量選択の手段に遺伝的アルゴリズムを用いた際の判別能力を考察した。
特徴量に標本線を用いる場合の判断方法などアドバイスをいただいた。生産ラインでの実証検証には至っていないが作業者による判断が困難な場合の選択肢の一つとして適用できるよう実用化に向け改良していきたい。
3.「Bブレーク条件出し」(KOA(株) 守谷敏)
角形抵抗器の個片分割では、分割ベルトの選定や大まかな条件についてはL18実験で条件選定を行っている。
今回はさらに細かな条件選定をL9実験で行った。制御因子を分割機の設定条件、ノイズは分割ベルトの新旧、特性値は分割した時の不良の発生率とした。
大まかな条件設定はできていたので、不良の発生はL9のうち1つ〜2つの組合せしかなかった。
そのような結果から作った要因効果図なのでV字となる因子もあったが、不良の種類別に効果図を作り、そこから最適として選んだ条件での再現実験ではよい結果が得られた。
4.「定期保全の式の検討」(顧問 岩下幸廣)
品質工学講座2などに記載されている定期保全の式は、ストレスdがd^2=a*tの変化を仮定して、最適保全時間を算出している。他のdの変化パターンに対応するため、d=a*t^bとした場合の最適保全間隔を算出した。dの変化を計測し、冪関数で近似してbを求めると、dの変化パターンに応じた最適保全間隔を求めることができる。
2023年5月12日(金)に2023年度の総会および第1回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子・航空技術部門(長野県岡谷市)およびオンライン(Webex)にて同時開催した。(参加者:15名)
以下の3つの事例発表についてディスカッションした。
【総会】
令和4年度の事業報告および令和5年度の事業計画が承認された。本年度の会員数:16(正会員:11、特別会員:6、顧問:1)である。開催日程は全11回を予定している。活動内容は、「事例発表(会員の持ち回り)」、「合同研究会」および「講演会」である。
【事例発表】
1.「品質の評価」 (日精樹脂工業(株) 常田聡)
品質工学における品質の定義と損失関数の導出、および損失関数を用いた許容差の決め方について説明した。
出荷前の損失と出荷後の損失をバランスさせるために、経済的に許容差を決めることが必要である。
2.「MT法における、多重共線性の影響および一般化逆行列の効果の再考」 (日置電機(株) 永岡正敬)
MT法には多重共線性の問題があると言われるが、回帰分析で偏回帰係数を推定する計算と比べると、マハラノビス距離での逆行列によるベクトル線形変換の計算は性質が異なることから、MT法には多重共線性の問題はないと結論づけた。またランク落ちしたデータに対して、一般化逆行列を使ってマハラノビス距離の計算を試すケースがあるが、この場合の単位空間は、相関の絶対値が1の列をそれぞれ1つずつ残して、通常の逆行列で計算したものと同じになることを示した。
そしてこの状態で信号データの判別を行うと、次元が減らされた方向のマハラノビス距離はゼロになってしまうことを示した。
3.「交互作用の事前見当方法の可能性について 〜直交表の2因子間の組合わせが全て現れるのを利用して〜」(シナノケンシ(株) 辻希望)
直交表には2因子間の組み合わせが全て現れるのを利用して、利得の再現性を確認する前に、2因子間に交互作用があるかどうか、事前に見当出来るのかやってみた。
しかし、2因子間は総当たりだが、他因子は、未固定であるため、この影響がどれくらいあるのか?判断できない。
従って、交互作用の見当がつくと言えるのか?判断できない。
以上より、交互作用が小さい事例の時に、シミュレーションなどで、どのようなグラフになるのか見てみるのはどうかと、アドバイスを頂いた。
((有)増田技術事務所 増田雪也 記)
|
|
コメント(0) / トラックバック(0)|活動報告|
|
長野県品質工学研究会の活動報告(2023年2月&3月)
|
2023年3月21日 09時53分
|
長野県品質工学研究会
2023年2月17日(金)に2022年度の第10回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子・航空技術部門(長野県岡谷市)およびオンライン(Webex)にて同時開催した。(参加者:12名)
同日の午後に開催予定の品質工学実践交流大会で事例発表するテーマについてリハーサルを兼ねた事例発表を行った。
2023年2月17日(金)、品質工学実践交流大会を長野県工業技術総合センター精密・電子・航空技術部門(長野県岡谷市)およびオンライン(Webex)にて同時開催した(参加者:32名)。内容は以下の通りである。
1)あいさつ 長野県品質工学研究会 会長 兒玉光
2)品質工学の実践事例(3件)
「平面研削加工の最適化 〜熟練金型職人VS新入社員のパラメータ設計〜」((株)サンコー 中村勇人)
「直交表を用いたソフトウェアテスト(HAYST法)導入のための社内教育紹介」(日置電機(株) 兒玉光・高橋博之)
「MT法による音声判別の試み」(南信空撮 中西徹)
3)特別講演会「経済性評価によるものづくりの最適化〜オンライン品質工学の適用〜」(信州大学 理学部 特任教授 岩下幸廣)
2023年3月10日(金)に2022年度の第11回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子・航空技術部門(長野県岡谷市)およびオンライン(Webex)にて同時開催した。(参加者:12名)
以下の4つの事例発表についてディスカッションした。
【事例発表】
1.「確認実験はSN比と感度のそれぞれで実施する必要がある(最大利得で確認実験すべき理由(わけ))」 ((有)増田技術事務所 増田雪也)
確認実験は通常、最適条件と比較条件で行う。SN比と感度の要因効果図の傾向が同じにならない場合は、最適条件を決める際にSN比or感度のどちらを重視するかによって、重視しない方の推定値の利得が小さくなってしまう。小さな利得でチェックすると、精度良く再現性をチェック出来ないことが明らかになった。従って、SN比と感度は、それぞれ最適条件と比較条件を設定し、実験する必要がある。また、比較条件は中位の条件ではなく、最悪条件を設定する必要がある。
2.「確認実験は、最適条件だけでいい(かも)」 ((有)増田技術事務所 増田雪也)
確認実験は通常、最適条件と比較条件で行うが、最適条件のみの実施でも再現性は推定できるため、比較条件は省略してもいいのではないか(つまり、利得でチェックしない)、という提案をした。
3.「相関とMD」(信州大学 岩下幸廣)
MT法、T法では、少ないデータ数での判断、予測ができるが、基準になるデータの信頼性が課題になる。事例を使って、MT法の基準データはχ二乗分布になっている事、T法では実測値と予測値のMD値に異常値がない事、によって信頼性の確認、見直しができる事を説明した。
4.「L8直交表で、交互作用を見たい場合の割り付け方について」(シナノケンシ(株) 辻希望)
線点図より、交互作用が見れる割り付けを行ったところ、ある因子とある因子の組み合わせによって、自動的に決まる因子が存在し、その因子を直交表へ割り付けることが出来てしまうという問題が発生。
要因効果図からは、交互作用の効果のみと見ることが出来るのか?自動的に決まる因子の主効果と交互作用の効果、どちらも混ざっていると見ることが出来るのか?判断に悩んだが、その因子間の交互作用が気になるのであれば、その因子間で、総当たり試験するのはどうかと、アドバイスをいただいた。
((有)増田技術事務所 増田雪也 記)
|
|
コメント(0) / トラックバック(0)|活動報告|
|
長野県品質工学研究会の活動報告(2022年12月&2023年1月)
|
2023年1月21日 09時54分
|
長野県品質工学研究会
2022年12月9日(金)に2022年度の第8回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子・航空技術部門(長野県岡谷市)およびオンライン(Webex)にて同時開催した。(参加者:15名)
以下の4つの事例発表についてディスカッションした。
【事例発表】
1.「「公差を狭めて、品質のバラツキを小さくする」それしか手段は無いのか?」 ((有)増田技術事務所 増田雪也)
「公差を狭めて、品質のバラツキを小さくする」という手段で安易にバラツキ改善しがちだが、コストが高くなるという欠点がある。この他に、設計条件や製造条件のパラメータを振ってバラツキを改善するという手段があり、コストアップせずに対処可能であることを説明した。
2.「T法の「推定値を求める」という機能を使って要因効果図を描く」 ((有)増田技術事務所 増田雪也)
T法の「推定値を求める」という機能を使って要因効果図を描く方法について説明した。試行錯誤のデータから簡単に要因効果図を作成することが可能である。
3.「T法はなぜ1/β、ηでの重みづけか?」(信州大学 岩下幸廣)
T法の特徴は、予測係数はX=βYとして計算し、Y=1/βXからYを推定する事にある。1/βは、Y=αXとして、α(補正)をα/相関係数の二乗として計算すると理解しやすい。また、各因子の重みづけとしてSN比ηを使用するが、相関係数の二乗(寄与率)を使っても計算可能である。説明変数の寄与率での重みづけと考えると理解しやすい。
3.付録「感染拡大の原因」(信州大学 岩下幸廣)
最近、厚労省から県別の抗体余裕率が発表され、最近の感染者は保有率の少ない地域に感染しているとの解説がされている。相関分析、T法での推定から、感染者数は気温と強い関係があり、抗体保有率は大きな要因でない事が分かった。夏は気温の高い地域で空調が使われ、冬は寒い地域で空調が早い時期から使われると考えると、夏の感染拡大、最近の冬の感染拡大は空調が原因と考えるのが妥当と思われる。
4.「絞り加工の直交表実験における水準について質問」((株)サンコー 中増光宏)
絞り加工のプレス金型におけるダイRの最適化を目的とした直交表実験の結果から、因子と水準の選択について考察した。また、直交表から任意の実験のみを選択して描いた要因効果図の意味について考察した。発表後の質疑応答で、今回の例ではスライド水準を取るべきなど、具体的なアドバイスを多数いただいた。
2023年1月13日(金)に2022年度の第9回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子・航空技術部門(長野県岡谷市)およびオンライン(Webex)にて同時開催した。(参加者:11名)
以下の2つの事例発表についてディスカッションした。
【事例発表】
1.「要因効果図の見方」((有)増田技術事務所 増田雪也)
要因効果図の縦軸は相対値であることを説明した。相対評価なので、横軸の水準値に設定しても、縦軸の値にはならないので注意が必要である。
2.「国産半導体技術の考察」 (信州大学 岩下幸廣)
Moorの法則は50年以上も成り立っている法則であり、国産半導体技術の復活に際しても参考になる法則である。同様に指数関数的に変化する技術的、社会的現象も多い。今までのデータを使って最小二乗法で予測することにより、技術開発などのガイドとなる。
2023年1月14日(土)、4県品質工学合同研究会をオンライン(主催は山梨)にて開催した。(オンライン参加者:確認中)
合同研究会とは、品質工学フォーラム埼玉(埼玉)、北陸品質工学研究会(富山、石川、福井)、山梨県品質工学研究会(山梨)、長野県品質工学研究会(長野)の合計4地区の地方研究会が、年1回各研究会持ち回りで開催しているイベントである。今回の合同研究会の内容については、山梨県品質工学研究会(http://yqes.web5.jp)から詳しい内容の報告があると思うが、「特別講演」や「ディスカッション(基本機能を考える)」など非常に充実した内容であった。なお、2023年は長野での開催を予定している。
((有)増田技術事務所 増田雪也 記)
|
|
コメント(0) / トラックバック(0)|活動報告|
|
長野県品質工学研究会の活動報告(2022年10月&11月)
|
2022年11月20日 09時46分
|
長野県品質工学研究会
2022年10月14日(金)に2022年度の第6回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子・航空技術部門(長野県岡谷市)およびオンライン(Webex)にて同時開催した。(参加者:11名)
以下に示す2つの事例発表についてディスカッションした。
【事例発表】
1.「貝探しは、解探し」 ((有)増田技術事務所 増田雪也)
潮干狩りの「貝探し」を題材に、1因子実験と総当たり実験と直交表実験の違いについて説明した。制御因子間の交互作用の大小によらず、直交表を活用することにより、効率的に良い条件を見つけ出すことが可能となる。
2.「ワイブル分布を使用した点検保全」 (信州大学 岩下幸廣)
保全における定期点検は、摩耗故障の故障確率の少ない使用初期も長期使用後の故障確率の高い時期も等間隔で点検をするが、故障確率に応じて点検頻度を増やす方が合理的である。そこで、「損失=点検コスト+修理コスト+故障損失」が最小になる条件を、ワイブル分布を用いて算出する方法を検討した。
2022年11月11日(金)に2022年度の第7回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子・航空技術部門(長野県岡谷市)およびオンライン(Webex)にて同時開催した。(参加者:13名)
以下の3つの事例発表についてディスカッションした。
【事例発表】
1.「T法を用いたソフト評価時間予測の経過」 (日置電機(株) 高橋博之)
2019年から運用を始めた「T法を用いたソフト評価時間予測」について、2021年までの運用実績を報告した。計算式作成時(既知データ)の相関係数は0.992、運用後(未知データ)の相関係数は0.937で、高い水準で運用できたことが確認できた。相関係数の集合が密になっている部分は対数の利用で間引ける可能性がある。説明変数をフラグで扱っている部分は、計算式を分けて運用することで誤差を減らせる可能性がある。などアドバイスをいただいた。
2.「計測値を使った保全管理」 (信州大学 岩下幸廣)
計測値による保全の最適化を検討した。事前に計測値の変化パターンが把握できれば、定期保全ができる。劣化などで計測値の変化パターンが変動する場合は、計測による点検保全が有効であり、計測値(点検)によって最適保全時間を調整できる。また、修理を重ねると修理間隔が短くなって全取替の方が経済的になるケースについても検討した。
3.「ExcelVBAによるMT法テストデータ作成について」(長野県工業技術総合センター 児野武郎)
ExcelVBAを用いて、MT法を適用するためのテストデータを生成するマクロファイルを作成した。MT法のマクロファイルと組合わせて、MTシステムの初心者向け学習資料として活用したいと考えている。
((有)増田技術事務所 増田雪也 記)
|
|
コメント(0) / トラックバック(0)|活動報告|
|
長野県品質工学研究会の活動報告(2022年8月&9月)
|
2022年9月26日 07時34分
|
長野県品質工学研究会
2022年8月10日(水)に2022年度の第4回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子・航空技術部門(長野県岡谷市)およびオンライン(Webex)にて同時開催した。(参加者:17名)
以下に示す4つの事例発表についてディスカッションした。
【事例発表】
1.「生産マシンの不具合改善(その2)」(伊藤哲也)
“生産マシンの不具合改善へのMT法適用事例”の活動状況を聞いて頂き、皆様から下記のようなアドバイス頂けた。
・“判別不可”となった前回からは大きく進歩し“判別可能ではないか”
・もう一歩踏み込んで原因分析を実施してみてはどうか?
今回、皆様から頂いたアドバイスを元に、活動を継続し、MT法について理解を深めてゆきたいと思います。
2.「フィードバック制御の式について」(信州大学 岩下幸廣)
オンラインQEのフィードバック制御の考え方を検討した。適用に際しては、u=λD^2の検討が必要である。また、点検での計測値をフィードバック制御に反映させると、点検回数を1回にできる可能性がある。
3.「「品質工学は、2段階設計です」と説明するのはヤメよう」((有)増田技術事務所 増田雪也)
品質工学は2段階設計と言われるが、従来型の開発手法も順番が異なるだけで2段階設計である。品質工学が従来型と異なるのは、バラツキと平均値を同時に(1段階で)実験/評価する点にある。品質工学を正確に説明することが、普及を進める上で重要である。
4.「直交表と分散分析」シナノケンシ(株)辻氏
L8直交表実験結果を分散分析して、寄与率を求めてみた。
YKK社と同様に寄与率を取り入れようとしたが、結局欲しいのは、因子のどの水準が良いかであり、要因効果図だけで十分ではないかという意見が出た。
2022年9月9日(金)に2022年度の第5回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子・航空技術部門(長野県岡谷市)およびオンライン(Webex)にて同時開催した。(参加者:14名)
以下に示す4つの事例発表についてディスカッションした。
【事例発表】
1.「保全の最適化について」 (信州大学 岩下幸廣)
定期保全の最適間隔は、「損失=保全コスト+故障損失」が最小になる間隔である。この考え方をベースに、ワイブル分布から最適保全間隔を求める事ができる。
また、品質工学講座2第11章記載の定期保全間隔は、m=2のワイブル分布の場合と一致することが分かった。
2.「N1とN2が逆転するケースはあるのか?」 ((有)増田技術事務所 増田雪也)
パラメータ設計で直交表実験をした際、ある行においてノイズのN1とN2が逆転することがある。それは異常なのか?正常なのか?について説明した。
3.「T法における項目数と総合推定の相関について」((有)増田技術事務所 増田雪也)
T法の項目数と総合推定の相関について検討した結果を報告した。今まで漠然と抱いてたT法に対するイメージとは異なる結果となった。
4.「潰し加工時の材料流動をT法で予測してみたい」((株)サンコー 井上貴裕)
プレス加工の材料流動量をT法で推定した事例を報告。
推定値が負の値をとってしまう問題に対して、目的変数を対数変換する等の手法を教えていただいた。
((有)増田技術事務所 増田雪也 記)
|
|
コメント(0) / トラックバック(0)|活動報告|
|
< 次のページ
前のページ >
|