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品質工学会誌(2009年4月号)
長野県品質工学研究会
 2009年1月22日(木)、第9回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子技術部門(長野県岡谷市)にて開催した。以下に示す2つの事例発表および3つの共通テーマについてディスカッションした。
【事例発表】
(1)「機械部品の機能品質と幾何公差の図面表示」 (CDT研究所 中村哲夫)
「幾何公差の図面表示」を例にして、実際の機械設計に品質工学が活かされているとは云い難い現状の話題提供があった。図面指示する幾何公差の適合性評価について、シミュレーション実験による可能性の議論、シミュレーション結果と現実の装置と の結果が一致しなかった場合の対処などについての討論がなされた。
(2)「直動滑り摩擦における摺動特性の研究(2)」 (日精樹脂工業(株)常田聡)
QES2006で発表した事例を見直した。当時はクーロンの法則をもとに荷重(信号)に対する電力量(出力)の機能を考えたが、SN比の利得の再現性が悪かった。今回、システムの捉え方を物を移送することとし、移動距離と電力量の関係と考えた。移動距離が1水準なので望目特性のSN比により評価した。その結果、利得の再現性が向上した。
【共通テーマ】→会員は以下の3テーマに分かれ、各テーマで1年間共通テーマに取り組んでいる
(1)「イメージによるパラメータ設計」
イメージによるパラメータ設計の題材として掃除機を選択して制御因子を考えた。取っ手の形状や延長の方法、アタッチメントの付け方などさまざまな因子が挙げられた。次回は直交表に割り付けて実験計画を立てる。
(2)「シャープペンの機能性評価」
シャープペンシルの機能性評価を目的とし、落下試験や筆圧を想定した加圧試験を行っている。その試験結果から、A(88円),B(168円),C(498円)のシャープペンシルにSN比を用いて優劣を付ける事が出来た。結果は、B>A>Cとなった。この結果から、購入金額も考慮してシャーペンを選択するとすれば、問題なくCは除外出来るが、AとBは、どちらが良いシャーペンかを選択する指標が無い。AとBの価格差は、Aの方が1/2であるからAとBに劣化を与えるとき、Bに2倍の劣化を与えて比較する方法も議論した。ただ、今求めた実験結果から合理的に、シャーペンAとシャーペンBの価格も考慮した優劣を付けるにはどうしたら良いかを次回までにメンバーで考える事とした。
また、今までの評価の目的、実験方法、実験結果、考察(もう少し議論が必要)を次回研究会までにまとめる。
(3)「T法、MT法、オンラインQEを使ってみよう」
オンライン品質工学の概要を解説するプレゼンが行われた。次回の研究会では、オンライン品質工学の中でも比較的理解しやすい「予防保全」を取り上げ、参加会員が各自のテーマで実施した事例を報告することになった。

 2009年2月14日(土)、品質工学合同研究会を能登小牧台(石川県七尾市)にて開催した。合同研究会とは、QEF埼玉(埼玉)、北陸品質工学研究会(富山、石川、福井)、山梨県品質工学研究会(山梨)、長野県品質工学研究会(長野)の合計4地区の地方研究会が、年1回各研究会持ち回りで開催しているイベントである。今回の合同研究会の内容については、北陸品質工学研究会から詳しい内容の報告があると思うが、「学会誌掲載事例の徹底討論」や「判定能力の評価方法の検討」など非常に充実した内容であった。なお、2009年は埼玉、2010年は山梨での開催を予定している。

 2009年2月19日(木)、第10回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子技術部門(長野県岡谷市)にて開催した。以下に示す3つの共通テーマについてディスカッションした。
【共通テーマおよび発表会】→会員は以下の3テーマに分かれ、各テーマで1年間共通テーマに取り組んでいる
2008年度に共通テーマで検討した内容をまとめ、発表会にて報告した。
(1)「イメージによるパラメータ設計」
イメージによるパラメータ設計の題材として前回の研究会で掃除機を選択した。今回は、制御因子と誤差因子について議論した。
制御因子は次を選定した。
 ・取っ手の形状
 ・スイッチの配置
 ・収納方法
 ・ゴミ捨て方法
誤差因子は次を選定した。
 ・手袋をする/しない
 ・大人か子供か
 ・高いところ掃除/低いところの掃除
制御因子を直交表L9に、誤差因子を直交表L4に割り付けて直積の実験を行うこととした。次回までにスケッチを作成し、研究会にて評価を行う。
(2)「シャープペンの機能性評価」
今回の最終回では、得られた結果をSN比、損失関数を用いた評価を行った。
3種のシャープペンシルにて、初期状態(購入後すぐの状態)、加圧後(劣化後)、落下後(劣化後)の3条件のSN比から、損失額を求めた結果、A>C>Bとなった。一方初期値を標準とし、加圧後、落下後の試験結果を用い標準SN比を用いて評価した場合、損失額は、C>A>Bとなった。これらの評価には、シャーペンが壊れた時の経費を一定にしている。
これらの結果から、初期状態も含めた形でのSN比と、初期状態を標準とした場合で結果が事なる事が判明した。初期の書き味も含めた場合は、初期値も加えた形でのSN比の計算値から損失額を計算する事が妥当と考えられるが、購入後の初期状態から変化が小さいものを選択する場合は、初期値を標準として標準SN比を求める方が妥当と考えられる。
これらの総まとめを品質工学会で報告し、シャーペンの芯のバラツキをもっと大きくすると面白い?等の意見があった。但し、今回の共通テーマは、チーム内で一定の結論が出おり、目的を達成しているので新テーマでの活動をする予定である。
(3)「T法、MT法、オンラインQEを使ってみよう」
会員が持ち寄ったオンライン品質工学の事例(計測器の校正周期)の検討を行った。発表会では、2008年度に実施した内容にについて報告した。今回使った3つの手法(T法、MT法、オンラインQE)の中では、特にT法は簡単で使いやすい手法として好評であった。
((有)増田技術事務所 増田雪也 記)
 http://nqes.web5.jp/blog/archive_21.htm
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