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品質工学会誌(2008年2月号) |
2008年2月21日 19時56分 |
長野県品質工学研究会
2007年11月22日(木)、第6回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子技術部門(長野県岡谷市)にて開催した。以下に示す2つの事例発表および3つの共通テーマについてディスカッションした。
【事例発表】
(1)「MT計算に関する検討」 (日置電機(株) 永岡正敬)
標準偏差=0の項目が含まれるデータや、多重共線性が強いデータでも計算できるMTシステムのプログラムをExcelマクロを使って作成した。
同じく、このような特異値を持つデータでも、MT計算可能としている市販ソフトと比較した結果は、次のようであった。
・特異値の割合が少ないデータの計算結果は、大体良い一致を示した
・特異値の割合が多くなるにつれて、計算結果は不一致となる傾向となった
今回このようなプログラムを作成したものの、標準偏差=0や多重共線性の処理を、どのような数理にするのが最もらしいかという検討がまだ不十分な状態なので、今後の課題としたい。
(2)「T法を用いた電気使用量の予測−非線形成分を考慮したT法の提案−」 ((有)増田技術事務所 増田雪也)
T法を用いて、自宅の電気使用量を予測した。測定項目は、平均気温、平均降水量、平均風速などの気象データおよび自宅を留守にした日数などである。信号の真値と測定項目との間に、非線形成分が存在するため、予測精度が良いとは言えない結果となった。そこで、非線形成分を考慮し、以下の2つの方法を試みた。
(A)予測値を多項式近似して非線形補正する
(B)各測定項目の値を多項式近似して非線形補正する
(A)と(B)のいずれの方法においても、非線形成分を考慮しない通常の方法に比べ、予測精度は1.8〜2.5db程度向上した。
【共通テーマ】→会員は以下の3テーマに分かれ、各テーマで1年間共通テーマに取り組んでいる
(1)「パラメータ設計でゴルフのパターを作る」
今回は進展なしであったが、できるだけL18直交表実験の準備を進め、次回の研究会では実験を行う予定である。
(2)「MT」
T法による予測事例として、諏訪湖の水質予測に関する月ごとの気象データや水質データが入手できたことから、クロロフィル量を予測する予備実験を行ったので、その結果について議論した。当初予定したアオコの予測については、アオコそのものの定義と数値データ化が困難であることなどから難しいと判断し、水質の予測を1つのターゲットに進めていくこととした。
(3)「モータの電力評価」
ノイズ(温度、運転時間、姿勢)をL4直交表に割り付け、5種類のモータについて、電圧、電力、回転数について測定を行なっている。今回は、温度(−10℃)での測定を行った。次回の研究会では、測定したデータ(電力、回転数、電圧)を用いて、各モータのSN比を算出し、機能性評価を行う予定である。
2007年12月13日(木)、第7回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子技術部門(長野県岡谷市)にて開催した。以下に示す事例発表および3つの共通テーマについてディスカッションした。
【事例発表】
(1)「スポンジゴムの切断条件最適化を通した切断作業者の能力評価」 (日精樹脂工業(株) 荒井亮平)
シール材として使用されているスポンジゴムは、切断作業者によってマット状の物から短冊状に切断をしている。切断されたスポンジゴムは切断作業者によって切断面が曲がってしまいシール材としての機能を果たせなくなるという問題があった。
そこで、「どの作業者でも目標値通りに真っ直ぐ切断できる条件を求める」ことを目的に、作業者2名を誤差因子にとり、直交表L9実験にて最適切断条件を求めた。しかし、結果は最適条件によってばらつきは改善されたが、SN比の利得の再現性が悪かった。再現性が悪かった原因として、今回選定した作業者2名の切断に対する上手・下手という差がうまく表れず誤差因子とすることに無理があった。作業者を誤差因子とする場合には、切断作業が上手・下手という差が大きい作業者を選ぶ必要がある。
次に差の大きい作業者を選ぶために、作業者4名において切断能力の評価を行った。評価方法は、切断条件最適化実験において得られた比較条件・最適条件を誤差とし、作業者ごとに各条件のSN比を求め、SN比の合計で評価を行った。評価結果として、作業未経験者が一番SN比が高く、作業経験者はSN比が悪かった。
まとめとして、最適条件によって切断条件を改善することはできた。切断作業経験者といっても能力が高いとは言えない事がわかった。
(2)「射出成形機における可塑化装置の設計条件の最適化」 (日精樹脂工業(株) 常田聡)
新規に開発中の小型射出成形機を用いて、可塑化装置の仕事量である溶融樹脂の押出重量と、エネルギー量である消費電力の関係を基本機能と定義し、電源電圧を誤差因子にした評価を行なった。その結果、高い利得の再現性が得られ機能が正しいことが証明された。さらに、スクリュー回転数と押出重量の目的機能における評価と目標値への合わせ込みも行った。基本機能と目的機能による可塑化装置の機能性評価により、開発段階からロバストな設計条件を得ることができた。
(3)「オゾンガス溶解装置の最適設計」 ((株)IHIシバウラ 浦野崇)
アスピレータと溶解タンクからなる装置について、溶解効率が良く、ノイズに強い装置を目標に、品質工学を適用した。水温をノイズ、原料水圧力、オゾンガス流量、溶解タンクのサイズなどをパラメータとして、実験を行ったところ、溶解効率は感度、SN比ともに原料水圧力、オゾンガス流量に依存し、そのほかのパラメータの影響は小さいことが確認できた。今後は関連するユニットの最適化を図り、システム全体の最適化を図っていく予定である。
【共通テーマ】→会員は以下の3テーマに分かれ、各テーマで1年間共通テーマに取り組んでいる
(1)「パラメータ設計でゴルフのパターを作る」
パター最適設計の直交表実験を行った。パターマシンを用いて、パターをスイングさせる。誤差は、パターの中心でボールをヒットした場合とパターの先端でボールをヒットした場合とした。信号は「パターのバックスイングの高さ」、特性値は「ボール速度」とした。
直交表実験は、1時間30分程度で終了し、これから解析を行い、次回の研究会では確認実験を行う予定である。
(2)「MT」
メンバーが行った電子部品製造におけるMTシステムを用いた不良率(歩留まり)予測に関する事例と、T法による諏訪湖の水質予測について議論した。諏訪湖の水質予測では、1ヶ月後、3ヶ月、12ヶ月後の予測は、現状のやり方では難しいことが解り、新たな項目の探索や、単位空間の取り方の工夫などについて、検討を進めていくこととにした。
(3)「モータの電力評価」
各モータのSN比を算出した。基本機能は、入力「電圧」-出力「電力」、入力「回転数」-出力「電力」を、基準点比例式や標準SN比にて解析を行った。今回の実験では、無負荷の状態で電力を測定したが、実際にモータが仕事をする状態、つまり負荷をかけた状態での評価がどのようになるか、今後検討する必要があると考えられる。
((有)増田技術事務所 増田雪也 記) |
http://nqes.web5.jp/blog/archive_13.htm |
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