長野県品質工学研究会の活動報告(2024年2月&3月)
|
2024年4月3日 10時22分
|
長野県品質工学研究会
2024年2月2日(金)、第14回品質工学実践交流大会を塩尻インキュベーションプラザ(長野県塩尻市)で開催した(参加者:25名)。内容は以下の通りである。
1)あいさつ 長野県品質工学研究会 副会長 増田雪也
2)品質工学の実践事例(3件)
「パラメータ設計を用いた薄型ブラケット旋盤加工の真円度改善」
「MTシステムによる通勤時間に関する研究」((有)増田技術事務所 増田雪也)
「MTシステムを用いた表面粗さ曲線の解析」(長野県工業技術総合センター 児野武郎)
3)特別講演会「AIをMTで評価する」(東京都立産業技術大学院大学 越水重臣)
AI(機械学習・深層学習)およびMT法についての紹介の後、AIが生成したゲームキャラクターの画像を、MT法で判別した結果を紹介いただいた。
人間が判別した結果と大差ない結果となっており、大変興味深かった。
2024年3月8日(金)に2023年度の第11回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子・航空技術部門(長野県岡谷市)およびオンライン(Webex)にて同時開催した。(参加者:14名)
以下の2つの事例発表および特別講演を行った。
【事例発表】
1.「制御因子を割り付ける「列」を入れ替えて、要因効果図の傾向を観察してみた」 ((有)増田技術事務所 増田雪也)
火縄銃のシミュレーションにおいて、制御因子をL9直交表に割り付ける際、割り付ける列を様々に変えた時の要因効果図を比較した。
その結果、どの制御因子をどの列に割り付けるかによって、要因効果図の傾向が変わることが分かった。時には非線形な成分が現れるケースがあった。
2.「Signal Catcherを用いた表面粗さ曲線の解析」 (長野県工業技術総合センター 児野武郎)
表面粗さ標準片の測定結果から得られた粗さパラメータをMTシステムで解析し、加工方法を判別できるパラメータの探索を行った。その結果、粗さ曲線判別にはRsm(粗さ曲線の平均長さ)やRsk(スキューネス)などが影響していることが分かった。
また、T法を用いてあるパラメータから別のパラメータを推定する試みを行い、高い精度で推定できることが分かった。
解析には自作のソフトに加えて田中精密工業製「Signal Catcher」を用いたが、GAなど自作では難しい解析を行うことができ、より高度な解析を行うことができた。
【特別講演】
「Signal Catcher ver3.0バージョンアップ機能紹介 -多チャンネル機能とその効果-」((株) タナカエンジニアリング 石澤剛士)
MTシステムのソフトウエア「Signal Catcher」のバージョンアップ内容について紹介いただいた。多チャンネル機能を追加したことにより、判別精度を向上させることが可能となった。
((有)増田技術事務所 増田雪也 記)
|
|
コメント(0) / トラックバック(0)|活動報告|
|
長野県品質工学研究会の活動報告(2023年12月&2024年1月)
|
2024年1月22日 11時33分
|
長野県品質工学研究会
2023年12月2日(土)に第20回4県品質工学合同研究会(埼玉・北陸・山梨・長野)をテクノプラザ岡谷(長野県岡谷市)およびオンライン(Webex)にて同時開催した。21名(埼玉1名、北陸3名、山梨4名、長野13名)の参加者が集まった。合同研究会の内容は、以下の通りである。
【各県研究会の近況報告】:参加各県の研究会の活動が報告された。
【各県の事例発表】
・パラメータ設計での推定式の活用(長野県品質工学研究会 岩下氏)
・わかりやすい品質工学の考え方(北陸品質工学研究会 林氏)
・旋削加工の技術開発(品質工学フォーラム埼玉 鷺谷 氏)
・パラメータ設計の社内実習(山梨県品質工学研究会 古江氏)
【討論:ツールとしての品質工学】:何をやれば、品質工学をツールとして使える様になるのか?単純に、社内教育し、実践し、その成果を発表しても、思うように普及しない。では次の手は何なのか?についてディスカッションした
2024年1月12日(金)に2023年度の第9回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子・航空技術部門(長野県岡谷市)およびオンライン(Webex)にて同時開催した。(参加者:12名)
以下の3つの事例発表についてディスカッションした。
【事例発表】
1.「品質工学の○○という考え方は正しいのか?(それ鵜呑みにしてませんか?)」 ((有)増田技術事務所 増田雪也)
品質工学のある基本的な考え方「制御因子間の交互作用が大きい場合、そのシステム(技術)は不安定だから使えない」について検討した。この考え方は、「タグチ氏がそう言っている」という説明がされるのみで、根拠が明確に示されていないという大きな問題点があり、品質工学を普及する上での弊害となっている。この考え方の根拠を考えてみたが、根拠を導くことは出来なかった。制御因子とノイズの区別がついていないことが原因で、間違った考え方になってしまっているという結論に至った。
2.「交互作用考慮の方法」 (顧問 岩下幸廣)
回帰分析、T法の推定式での交互作用を考慮した計算方法を検討した。2項での交互作用の場合、説明変数xi、xjの積xi*xjを交互作用の説明変数としてもある程度の推定ができるが、それぞれの説明変数を標準化(x-Av)/σして、その差の絶対値を説明変数にした方がより優れていることが分かった。
3.「ηを計算しないT法の方法」(顧問 岩下幸廣)
T法では、それぞれの説明変数について、βとηを計算し、1/β*ηiΣηを係数として足し合わせて推定式としている。今回は、βを計算し、データと推定式ができるだけ一致する様に最小二乗法で重みづけをする方法を検討した。この方法は、データと相関の高い推定式が得られるだけでなく計算が簡単であり、より実用的な方法である。
((有)増田技術事務所 増田雪也 記)
|
|
コメント(0) / トラックバック(0)|活動報告|
|
長野県品質工学研究会の活動報告(2023年10月&11月)
|
2023年11月27日 10時14分
|
長野県品質工学研究会
2023年10月13日(金)に2023年度の第6回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子・航空技術部門(長野県岡谷市)およびオンライン(Webex)にて同時開催した。(参加者:9名)
以下の3つの事例発表についてディスカッションした。
【事例発表】
1.「自動生産における品質管理と異常の定義について」(太陽工業(株) 葉玉知子)
自動生産ラインに組込むシステムについて異常判定をどのように定義するか、業務案件の課題を相談させていただき会員の皆様にご教示いただいた。
品質工学を用いて判断することをご提案いただいたので、社内で改めて検討したい。
2.「UAVを用いた水稲におけるリモートセンシングの活用」(南信空撮 中西徹)
マルチスペクトルカメラを搭載したドローンで、夏場の圃場のNDVI分布を確認したところ、育成不足の部分が判った。そこで、育成部分のみにドローンで追肥をしたところ十分なリカバリーが出来た。
更に、7月中旬のNDVIの高い部分は、9月初旬に倒伏した部分とほぼ一致し、NDVIで倒伏予測が可能であることが分った。
来年以降は、NDVIを予測するためにT法を活用したり、パラメータ設計でNDVIの均一化を図る等、品質工学を農業分野にも適用していきたい。
3.「シナノケンシのパラメータ設計推進活動の紹介」(シナノケンシ(株) 辻希望)
パラメータ設計の進め方や適用方法等を紹介した。
品質工学を主張しすぎるとかえって使いたくないと思う人が現れるので、困っている課題に対して、アプローチするのは良いのではないか?とか
L18直交表は時間が掛かると言う人には、L8直交表を勧めるのが有効とか
勝手にやってしまう人には、L18だとしても、1条件ずつ小出しにして試験を進めてもらうとか
他にもいろんな話を聞くことが出来た。
4.「品質工学で、予備実験しないで直交表実験に進んだ結果、無駄な最適化をしてしまった話」 ((有)増田技術事務所 増田雪也)
機能に与える影響度が低いノイズ(誤差因子)を与えてパラメータ設計した結果、殆ど改善が出来なかった事例を紹介した。対策としては、直交表実験の前に予備実験を行い、ノイズの影響度を把握しておく必要がある。
2023年11月10日(金)に2023年度の第7回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子・航空技術部門(長野県岡谷市)およびオンライン(Webex)にて同時開催した。(参加者:9名)
以下の1つの事例発表および共通テーマについてディスカッションした。
【事例発表】
1.「品質特性による最適化」 (顧問 岩下幸廣)
パラメータ設計では機能を評価するが、適用の際に機能の検討で躓いてしまうことが多い。
そこで、品質特性を使って評価する方法を検討した。品質特性は複数の特性を評価するので、「@各品質特性をT法、最小二乗法によって推定式を作成するA各特性から損失関数を計算し、合計が最小になるパラメータを求める」ことによって、最適パラメータを算出することが出来る。
その際に特性は望目特性とすることが重要である。
【共通テーマ】
「ネジ締めにおける機能の評価方法」
先ずは予備実験でデータを取り、そのデータを見ながら議論をすることになった。
((有)増田技術事務所 増田雪也 記)
|
|
コメント(0) / トラックバック(0)|活動報告|
|
長野県品質工学研究会の活動報告(2023年8月&9月)
|
2023年9月27日 12時55分
|
長野県品質工学研究会
2023年8月10日(木)に2023年度の第4回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子・航空技術部門(長野県岡谷市)およびオンライン(Webex)にて同時開催した。(参加者:13名)
以下の3つの事例発表についてディスカッションした。
【事例発表】
1.「多特性の損失関数」 (顧問 岩下幸廣)
多特性の損失関数を検討した。前回の発表の様に、パラメータ設計において@T法による推定式A損失関数による最適化によって条件の最適化ができるが、品質特性などの複数の特性で最適化するためには、多特性での損失関数を使った方法が有効である。
2.「医療関連製品製造業での品質管理について」 (会社都合により発表者名は非公開)
医療関連製品製造業メーカーの品質保証担当者より、関連製品の特長、自社製品の紹介、製造方法、品質管理方法について報告。
設計から出荷後の製品管理において工業製品とは異なる部分がある中で、品質工学がどう活用できるか会員よりアドバイス・レクチャーを受けた。
3.「SN比の利得が再現したらどうする?」(顧問 常田聡)
パラメータ設計では確認実験にてSN比の利得の再現性をチェックするが、その利得の再現性の良し悪しの判断は曖昧であることを報告した。
できれば利得を品質ばらつきの改善だけでなく生産性の向上にも使い、そして、損失関数を用いて生産コストの改善効果を予測したい。
それが年間のコスト改善につながれば企業の利益増加になる。
すなわち、利得の再現性を追究することは、改善コストの再現性の追求であることを報告した。
2023年9月8日(金)に2023年度の第5回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子・航空技術部門(長野県岡谷市)およびオンライン(Webex)にて同時開催した。(参加者:12名)
以下の2つの事例発表および共通テーマについてディスカッションした。
【事例発表】
1.「送風ファンの効率最適条件」 (シナノケンシ(株) 辻希望)
利得の再現性がよくなかったのは、制御因子間の交互作用の可能性を考える前に、小さい利得で確認実験を行っていた為、精度良く再現性をチェックできているとは言えないと判断した。
目的が再現性をチェックすることでは無いので、L18の中から、1番良い条件を最終最適条件とした。
N1とN2で逆転している条件が約半分くらいとなったが、1条件以外は、差が小さい為、ノイズに強い条件と見なしても良いのではないか?とアドバイスを頂いた。
また今回、望目特性で評価をしたが、エネルギーとして捉えた動特性の考え方についてもアドバイスを頂いた。
2.「検査の課題と考察」 (顧問 岩下幸廣)
ベイズ確率を考慮した検査設計を検討した。その結果、ベイズ確率を考慮しても、臨界不良率の変化は小さいことが分かった。また、潜在的不良率が小さい場合、通常検査より精度が悪いが安価な簡易検査を行い、その後不良判定品を通常検査で再検査すると損失を減らせる。この結果は、検査精度の悪い生物的検査では効果的であり、新型コロナ感染などの検査では、キットによる検査での感染判定者をPCR検査することが効率的な場合が多いことが分かった。
【共通テーマ】
「ネジ締めにおける機能の評価方法」
過去に研究会のメンバーが集まって取り組んだ「共通テーマ」について、今回から新たなテーマに取り組んでみたいと提案した。
テーマ名は『ねじ締めにおける機能の評価方法』とし、一般機械でよく使われるボルトやナットを対象に検討を開始した。
まず、メンバーの企業でどんなねじに関する問題があるかあげてもらい、その後、JISをもとにねじ締めの方法と問題点を紹介した。
次回は、ねじ締めの機能の検討を進めたい。
((有)増田技術事務所 増田雪也 記)
|
|
コメント(0) / トラックバック(0)|活動報告|
|
長野県品質工学研究会の活動報告(2023年6月&7月)
|
2023年7月25日 08時05分
|
長野県品質工学研究会
2023年6月2日(金)に2023年度の第2回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子・航空技術部門(長野県岡谷市)およびオンライン(Webex)にて同時開催した。(参加者:18名)
以下の3つの事例発表についてディスカッションした。
【事例発表】
1.「要因効果図を使って「バラツキ」と「平均値」をコントロールする(要因効果図の4つのパターン)」 ((有)増田技術事務所 増田雪也)
SN比と感度(平均値)の要因効果図を4つのパターンに分けて、制御因子の水準を変更すると、バラツキと平均値がどのように変化するかをアニメーションで説明した。
2.「1因子実験でも交互作用の大小のチェックが可能か?(確認実験すれば交互作用をチェック出来る!でも…)」 ((有)増田技術事務所 増田雪也)
1因子実験においても、確認実験をすることで制御因子間の交互作用をチェックすることが可能である。交互作用が小さい場合は、1因子実験と直交表実験の差は無い。しかし、交互作用が大きい場合は、直交表実験の方が(2因子間の交互作用を含んだ)「最適条件」または「それに近い条件」が求まるというメリットがある。
3.「品質の評価(2)−SN比の歴史」(常田聡)
SN比が最初に登場した1952年から、現代のSN比のベースとなった1970年代までどのように進化してきたかを報告した。
いわゆるオメガ変換を用いた電話の明瞭度からはじまって、通信のSN比を応用して求める方法や品質の比較方法、直交多項式展開を用いた測定法における一次校正のSN比などについて紹介した。
いずれも対数を取る前の値が『分散比』であることがわかり、SN比の本質を理解するのに役立ったと感じた。
次は1980年代以降、現代に至るまでのSN比について調べてまとめたい。
2023年7月14日(金)に2023年度の第3回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子・航空技術部門(長野県岡谷市)およびオンライン(Webex)にて同時開催した。(参加者:11名)
以下の事例発表および特別講演を行った。
【事例発表】
「パラメータ設計での推定式の活用」 (顧問 岩下幸廣)
パラメータ設計において、T法で推定式を作成し、損失関数を使って最適化を行うことを検討した。その結果、目的に対応した最適条件が得られるだけでなく、T法の特徴も生かせることが分かった。また、複数の品質特性データからモグラたたきではない最適条件を決定できることも分かった。
【特別講演】
「SignalCatcherの紹介と使い方」((株)タナカエンジニアリング 石澤剛士)
MTシステム(MT法・T法)のソフト「SignalCatcher」の紹介と使い方の説明を紹介していただいた。
研究会会員の事例を実際にMT法にて解析し、判別可能であることが示された。
波形解析について、標本線および重心法による特徴化と解析のやり方について、詳細なレクチャーを受けた。
有料版のソフトであるが、研究会の会員はデモ機を無料で使うことが出来るため、今後のMT法の発表事例が増えるのではと期待している。
((有)増田技術事務所 増田雪也 記)
|
|
コメント(0) / トラックバック(0)|活動報告|
|
< 次のページ
|